シンポジウム・研究集会

東日本大震災では、有名な文化財以外にも地域の方々に守られてきた建物等がたくさん被災しました。 今回は、そういった地域で大切に守られてきたものについて考えます。

10周年記念シンポジウム第2回「東日本大震災と私たち」 
『文化遺産と“まち・地域”の 再生を考える』

日時・会場
  ・日時 平成24年7月15日(日)受付 12:30〜 
                   開始 13:00
 
  ・会場 東京大学農学部弥生講堂・一条ホール(入場無料)

■第一部 発表

 ●後藤治 氏(工学院大学建築学部教授)
   □「宮城県石巻市プロジェクト紹介及び伝統的町並み地区における災害対策」

 ●野村俊一 氏(東北大学大学院工学研究科 助教)
   □「建築遺産の保存と再生−東日本大震災からの考察」

 ●山中知彦 氏(新潟県立大学国際地域学部 教授)
   □「変化する地域環境における生活文化遺産の意味」

 ●矢部三雄 氏(林野庁東北森林管理局 局長) 
   □「被災地支援と本格復興に向けた木材供給体制」

 ●佐藤久一郎 氏(林業家) 
   □「東日本大震災被災地に林業者として生きる」

■第二部 パネルディスカッション

 『地域と文化遺産の再生・構築を考える』

パネラー : 発表者の方々

コーディネーター : 窪寺 茂 氏 (建築装飾技術史研究所所長)

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出演者紹介:(事務局制作)


●後藤 治氏 当会理事 今年、工学院大学は、創立125周年を迎えます。昨年の東日本大震災には、記念事業の一環として集まっていた寄付金をもとに、大学が、被災された方々のための住宅を復興住宅の提案として石巻市に建設しました。こんなあり得ない話を実現させたのが、地元の方々や工学院大学建築学部後藤教授の熱意。

●野村俊一氏 東日本大震災により、社会や文化の受け皿となる都市・建築も甚大な被害を受け、沿岸部・内陸部を問わず存亡の危機に瀕しているものが多数生じました。この事態を受け、期間限定の組織「建築遺産再生研究推進体」を2011年度に立ち上げ、関係諸機関と協同で歴史的建造物の再生を目的に活動を行っておられます。

●山中知彦氏 専門分野は景観・都市デザイン、まちづくり活動支援で、住宅や住環境の設計と一定の場所性に立脚した住宅から公共の空間に至る都市設計に取り組んでおられます。後藤氏、野村氏も同様ですが、山中氏も大震災後の被災地をくまなく歩き、被災状況の報告をされています。これを機に今後のまちづくりなどについて伺います。
●矢部三雄氏 東北森林管理局局長として、あの日は、まず、各地の森林管理署職員の安否確認。その後は、その地域地域でできることを何でも行えと陣頭指揮。職員たちは、いちはやく通信の失われた各地の役場に各管理署にある衛星電話を届け、ガソリンや必需品も集めてまわり届けた等々、ありとあらゆることをされたとのこと。今も復興の最前線におられます。
●佐藤久一郎氏 宮城県南三陸町志津川の町が、由緒ある佐藤家の家屋敷も蔵も、すべて流されてしまいました。しかし森林組合事務所で、寸暇を惜しんで復興事業に取り組んでおられます。仮設商店街や地域の杉を使用して建てた仮設住宅。被災した製材所も再建され始動し始めました。今後は復興住宅の生産や南三陸杉の家づくりにも取り組みます。

●窪寺 茂氏 当会理事 現在岩手県奥州市在住。ご親戚にも被災された方が多くおられ、現地の方々の思いを重く深く受け止めながら、文化遺産の大切さをより一層真剣に考えておられます。

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シンポジウム開催の趣旨
 平成23年3月11日、東日本を襲った大震災と大津波により、東北の地は多くの人命と家屋、町などが奪われました。その被災者の方々の悲痛な思いと悲しみは、遠い地で生活している私たちにとって想像を絶するものですが、その際の衝撃は忘れることができません。
 私たちは戦後の繁栄の中で文化遺産を継承することの大事さを痛感し、同時にこれを維持することの難しさも知ってきました。しかし、この大震災が及ぼした、「人命」と「まち・地域」を根こそぎ奪い取った出来事に遭遇し、あらためて私たちの生活のあり方や社会の今後のことを考えさせられました。

 そこで、何らかの形で被災地と関わられた方々にこのシンポジウムのパネラーとしてご登壇していただき、文化遺産の基盤である「まち・地域」の再生に関するお考え・ご意見をお聞きし、私たち自身がこれからのことを考えるうえでの糧としたいと思います。

 私たちは、昨年の大惨事についての共通認識を持ち続けることが大事なことであるとの意識から、今回このシンポジウムを開催することにしました。

二百年後の文化財の維持保存を案じる当会が、直近の明日に向けても取り組んで参ります。ご参加お待ちしています。

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