山本 博一

森林から生まれた文化

 コンピュータネットワークがもたらすグローバリゼーションは経済のみならず、社会の仕組みにも変化をもたらし、現代文明そのものが揺らいでいる。20世紀とは異なる価値観が伝統や家族、信仰に対峙しつつある。「文明」というシステムが揺らいでいるなかで、その基盤をなす土壌ともいうべき「文化」は時間を超越し、その気候、風土、民族にとって普遍的なものとして存在し続ける。グローバリゼーションの荒波の中で人々はそのアイデンティティを求め、自らの基盤となる文化を確認しようとする。日本社会では再生可能な生物資源をふんだんに利用した「木の文化」をその特徴としてあげることができる。西欧文化と本質的に異なる循環型社会を築いてきた日本文化を最も端的に表現しているのが、法隆寺に代表される木造建造物である。こうした木の文化を育んだ背景に豊かな森林があり、この森の恵みを巧みに利用してきた伝統工芸技術があり、その表現形として壮麗な木造建造物がある。しかし、多くの国民にとってこうした木造建造物とこれを支えてきた森林との関係を連想することは困難である。

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