« NO.342 キンモクセイも散って10月 | メイン | NO.344 新品のパソコンで »

2006年10月06日

NO.343 ホワイトウッドよりスギヒノキ

 速水さんの最新コラム「風向計」が読売新聞に掲載されました。
以下のアドレスで読むことができます、と読売新聞社のSさんから御連絡をいただきましたのでこの欄でもご紹介。

http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko061006.htm

 4日に速水さんとお話をしたばかり。林業や森林の事をいつもながら熱心に話される様子に、こちらまで熱くなってきました。今の国産材市場の事など、わかり易いので転載させていただきます。

■国産材人気 林業再生の好機

速水林業代表 速水亨さん
(79年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。53歳。)

 国産材市場が活況を呈している。

 各地の製材工場には、今まで国産材に見向きもしなかった大手の住宅メーカーから、「スギ材を集成材にするための板として供給してくれないか」という問い合わせが多くなっていると聞く。

 この10年間の国内の木材需給は、欧州を中心とする輸入材が大きくシェア(市場占有率)を伸ばした。これらは「ホワイトウッド」と呼ばれ、北欧や東欧、ドイツ、オーストリアなどに生育するトウヒ(唐檜)やモミなど、製材すると木肌が白い木材を総称している。国内では内装用に使われていたが、5枚張り合わせて柱にすることで、木材の形状が安定し、強度も増す。ユーロ安で安価だったことや、供給も安定していたことから、次第に普及していった。

 ところが、昨年から政府が京都議定書の温暖化ガスの削減目標6%のうち、森林吸収分3・9%の確保のためにも、国産材を積極的に使うように運動を始めた。その効果もあって、今までホワイトウッドを使っていた大手住宅メーカーを中心に、国産材へ切り替える研究が進んだ。それに呼応する形で、スギやヒノキの乾燥や集成材、合板などの技術開発が進み、使いやすい製品が増えた。

 時を同じくして、中国、インド、中東産油国の需要拡大で、海外の木材産地の原木価格が値上がりした。そのうえ、ユーロ高による輸入材の価格上昇で、スギは最も安い木材の一つになった。高価だといわれたヒノキでさえ、耐久性や強度などの性能を考えると、十分に安価な建築材料になった。

 また、トウヒやモミのホワイトウッドは、もともと湿度や水に弱いため、強度面で一抹の不安がある。

 ちょうどホワイトウッドを多用し始めて10年。より安心感のある国産材に住宅メーカーが戻ってくるのも当然だろう。

 そして、林野庁の補助政策もあり、各地で山側と流通加工が一体化した大型製材工場が作られている。そこに山から安定的に木材を供給し、伐採、搬出、加工、流通と、トータルでコストを下げていこうとする動きが全国各地で始まっている。

 それが本格的になるには、今までのように、部分的に生産性を上げるのではなく、例えば木材乾燥には廃材などのバイオマス燃料を使用し、発電まで考えるなど、木材を全て使い切る利用方法が前提となる。また、製材業だけでなく、様々な森林産業、木材産業の産業集積が重要だ。

 この中部地方は、木曽ヒノキ、尾鷲ヒノキ、東濃ヒノキ、天竜スギ等々、国内の名だたる林業地帯で囲まれている。これらの林業地帯は、歴史があるがゆえにダイナミックな変化に対応できない側面も見られるが、すでにいくつかの動きは始まっている。

 今後、ユーロ高が続けば、国産材の利用はかなり増加すると思われる。その流れの中で、森林を伐採して得られる立木価格を基にして、森林の管理が循環型で維持できるかどうかが問題である。

 海外では、林業はファンドの投資対象として組み込まれるほど有望な産業である。国内の林業も今一度、地域の経済を潤わせ、そして国土を守り続ける産業になる努力を、あきらめずに続けることが大事だろう。

(2006年10月6日 読売新聞)