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2009年01月26日

NO.450  「文化材」育成、長い目で

 また、嬉しいこと。
 昨年の12月7日のシンポジウムに参加して下さった読売新聞柳林修氏のコラムが、1月19日の夕刊(関西版)に掲載されましたのでご紹介。

 「文化材創造プロジェクト」第一回の感謝状贈呈式が終ってからも問合せや登録申込みが続いているのですよ。今日も申込み用紙送って下さいと電話がありました。嬉しいです。

 「文化材」という言葉は、当会共同代表内山節さんが考えた「新語」なのですが、すんなり各分野の方々に受け入れられそうで安堵しています。
 古いお寺などに行くと、「材」そのものが「文化財」!と言える程の素晴らしい材に出会いますが、思わず撫でて、ぬくもりを確認。
 そんな「文化材」を、私たちはこれから作っていくのですよねー。
 素敵なことですよね。


「文化材」育成、長い目で

日本の国土の67%は森林。豊かな森林資源は、心安らぐ「木の文化」を育んできた。約4300棟ある国宝や重要文化財の建造物のうち、木造が90%を占める。それらは、200〜300年に1度の大修理と、その間の小修理を繰り返して美しい姿を伝えてきた。世界最古の7世紀の木造建造物、奈良・法隆寺の柱には修理材を見かける。

しかし、大修理に使う樹齢200年以上の大木が減って確保が難しくなった。木材価格の暴落などによる林業の衰退が、「時間をかけて育てる」環境を失わせてきたからだ。
これを改善し、木造建造物を守るシステムを築こうと、建築史家で文化功労者の伊藤延男さんや大野玄妙・法隆寺管長らが共同代表を務める民間組織「文化遺産を未来につなぐ森づくりの為(ため)の有識者会議」(電042・308・7227)が、「わたしの山に『文化財の森』を―文化材創造プロジェクト」を京都でスタートさせた。林業家が長期間、伐採せずに大木を育て、大修理に提供する森林を登録する制度だ。この大木を「文化材」と呼ぶことにした。

これまでに奈良、岡山などの林業家や大分県日田市が、「木の文化を守り、子孫に伝えたい」との熱い思いで、樹齢80年以上のヒノキや杉などの森林23か所を登録した。同会議は、2年後までに200か所に増やしたいという。大野管長は、「文化や文化財を守ることは平和運動にもつながる」と力説する。

同様の取り組みは文化庁や林野庁も始めており、官民の連携で運動の裾(すそ)野が広がって豊富な修理材の供給に結びつくことを願う。相続税が森林の長期の維持や育成を阻害しているから、税制面での優遇や配慮も検討すべきである。
「大修理は先の先」との考えは、取り返しのつかない事態を招く。「木を見て森を見ず」にならないよう、長期的視野に立った大局的な対策が必要。世界に誇る木造建造物を、国と国民挙げて守り伝えていかなければならない。
<読売新聞2009/01/19[夕閑テラス] 編集委員・柳林修>