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2009年02月16日

NO.452  風向計より 環境技術引き出す政策を

 最近の世界の情勢、日本の有様、なんだか心配なことばかり。

 でも、我が家の小さな庭の梅の木は、今年、2本とも誇らしげに枝という枝いっぱいに白い花を咲かせています。
 ジャムを入れる空き瓶や、梅酒の容器を沢山用意しておかなくちゃなんて、三年前も実が沢山なって、毎夜毎晩苦労したこと思い出しちゃいました。
 日差しの暖かい庭に降りて、満開の梅を見上げ、ふと感じる優しさ。

 さて、
 当会共同代表の速水亨さんのエッセイ「風向計」が届きました。
 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko090214.htm

 
環境技術引き出す政策を

 バラク・オバマ氏の米大統領就任式の招待状に見慣れたマークが印刷されていた。「FSC森林認証」というマークである。適切に管理された森林から伐採された木で作られた紙であることを証明する制度で、日本では初めて私の森林が取得した認証だ。「グリーン・ニューディール」政策の第一歩はFSC紙の使用だった。

 オバマ大統領のグリーン・ニューディールは魅力がある。どれだけ効果があるかは今後の経過をみるほかないし、待ったなしの不況対策とは別モノと考える必要はあるが、国の新しい方向を示す国民にも理解しやすい政策だ。
 日本では麻生首相が高速道路の料金を安くしたり、定額給付金を配ったり、1次、2次と補正予算を組んで政府支出を拡大している。しかし、なんとなく方向性が見えない。

 私は社団法人日本林業経営者協会と言う比較的規模の大きな森林所有者の集まりの会長を務めている。木材価格は1980年をピークに下がり続けており、現在、スギの立木価格は当時の15%以下に下がっている。しかし、協会青年部の会員は、私のように安い木材価格を前にため息をつくことがあまりない。「良かった時代」を知らないからこそ覚悟も持っているのだろう。

 日本経済も良かった時代を振り返るだけでなく、新しい形を追求しなければならない。20世紀は2つの戦争を経験して「安全」が重視された時代だった。安全はテロリストの脅威を前に21世紀に入っても大事な言葉となった。同時に、21世紀は地球の命を守る「環境」の時代となっていくことは間違いない。

 欧州も、オバマ大統領のニューディール政策と似た政策をとっている。新しい方向をどこに求めるかは、政治にも経済にも大事だ。政治には明るい未来を国民に見せて、そこに到達する方策も示す必要がある。その道筋が明らかになれば、国民は少々の苦労はいとわないだろうし、企業にも方針が見えてくる。

 今の日本の政策は、その場しのぎの不況対策に過ぎないものが目立つ。消費税の引き上げで「中負担・中福祉」を目指すというが、福祉は社会の安全弁であって、牽引力とはならない。国を牽引する日本経済の将来像を示すべきなのだ。
 日本の製造業は環境の時代に耐えうる十分な技術を持っている。政府はこの力を最大限に引き出して、日本が世界の技術をリードするきっかけを作るべきだ。このままでは、日本が世界の大きなうねりについていけなくなるのでは、と心配している。

(2009年2月14日 読売新聞)
速水林業代表 速水 亨さん
79年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。55歳。