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2005年07月23日

NO.272 盛岡に行って来ました

 7月21日、丁度二ヶ月前の事務局日記、NO.261 「民家の知恵は森も守る」と「もったいない」でご紹介した盛岡市の林業家、金沢様のお宅に行ってきました。
 
 約130年前に建てられた岩手師範学校の材が、その後尋常小学校の建築に使われ、その小学校が閉鎖され取り壊されたあと、その材を使って建てられたというお家、すでに築70年になるのだそうです。
 そして今度は、そのお宅を二世帯住宅にリフォームしたもの。
 風格のある古いお家を見るのは大好きですし、古い部材も建具もできる限り残し利用したといわれるそのお話だけでもぬくもりを感じるお家を、是非とも見たかったのです。

 たまたま当会理事の加藤鐵夫様が、その金沢様の家を見に行きますよとおっしゃるのですもの、ぜひとも、とお願いし同行させていただいたのです。
 お山を見せていただいた後、ご自宅に伺いました。

 まことに期待通り。
 以前の雰囲気を残したまま、車椅子でも生活できる様に諸機能を新たに備えたご両親のお部屋は、優しく穏やかな毎日を保障してくれそう。

 そして若い世代用には、明るく使い易そうなスペースが作られていました。
 キッチンとつながるリビングルームは、明かり取りの窓を屋根に開け、天井を吹き抜けにしたことで、明かるくせいせいとした広がりのある部屋になりました。そして何よりも師範学校時代からの材で作られたという(つまり130年前の材!)小屋裏の梁や桁がそのまま見えるのがかえって風格と落ち着きを与えてくれるのです。

 奥には、旧家の格式をそのまま伝えるお座敷や幅のある板敷きの廊下。昔ながらのガラス戸がクラシックな雰囲気をかもし出し、眺めるお庭の佇まいがまた美しい。
 雛の節句には、そのお座敷と次の間に幾つもの時代のひな人形がずらりと並び、それを廊下から眺めるのだそうで、巾が一尺以上もある板材でゆったりと葺かれたここちよい空間が座敷と庭をつないでおりました。

 元の家の良さを失うことなく、新たな機能を付加させた「節度あるリフォーム」は、(ある方は「バランスのいいリフォーム」と言ってらした)関心を呼び、改修工事終了後の一般公開では、二日間で680人もの方々が見学に見えたのだそうですよ。

 リフォームによって、二世帯住宅ができあがり、これを機にご両親と暮らし始めた若い奥様が、住み易い家になって喜んでいるんですよと笑顔で話して下さいました。

 3〜4年前、佐賀県の相内町で、しゃちほこが屋根を飾る立派なお家に泊めていただいたことがありました。二人だけで暮らしていたご両親が家を改築し、できたから見に来いと息子に連絡。やっと都合をつけ5月の連休に帰って、初めてそのお城のような家を見た息子さんは、何を思ったか9月には東京の勤め先を辞め、家に戻ってしまったのです。
 
 帰る価値があるとまで思わせた魅力がその家にはあったのでしょう。
 
 この家で暮らしたい、そう思って暮らせる方は幸せですよね。
 古い家には、何かしらの魅力があるもの。
 その良さをもっともっと引き出す努力が足りないのかも、と金沢様のお家を見せていただいて思ったのです。(あし)