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2006年02月08日

NO.316 立春に、スミス記念堂起工式

 2月4日、彦根は大雪。
 降ったり止んだりの雪の中で、スミス記念堂の再建起工式が厳修されました。
 この事務局日記でも何度か取り上げた「スミス記念堂」とは、かつて彦根市のお堀端にあった日本聖公会彦根聖愛教会の建物でした。
 昭和6年に当時この地方を担当していたアメリカ人牧師スミス氏が私財を投じ、母国からも寄付を募り集めたお金で地元の棟梁に依頼。その大工宮川庄助氏が意匠に教会的な要素を見事に組み入れて建てた、外見は純和風の礼拝堂なのです。


 ですが風雪に崩れかけ所有者の教会も見放していた建物を、あまりに惜しいと声を上げた方、それに賛同した方々が解体費用を募り、解体し保存してあったもの。
 地道な努力を続けた結果、保存再建運動が始まって以来9年余りという長い期間を経て、彦根市の協力も得、彦根城天守閣を見上げる絶好の地も得て、ようやく起工式を執り行う運びになったもの。

 当会は昨年度以来、この保存母体である「NPO法人スミス会議」と相互に団体会員になりました。
 昨年暮れの京都でのシンポジウムには、スミス会議からたくさんの方々に応援にきていただき、まことに嬉しく感激したのです。
 そんなお礼の気持ちもあって、喜ばしい起工式に参加させていただきました。

 降りしきる雪の最中にも関わらず、たくさんの方々が出席しておられました。  
 式はもちろんのこと直会にも、様々な方々が参加されていました。彦根市の市議さんや滋賀県の県議さん、商工会や自治会の方々、大学の先生方、陰になり日なたになり応援してこられた市民の方々、また獅山市長さんまで同じように談笑されるお姿に驚きました。
 10年近いこの年月、たくさんの方々の思いをつなぎ止めるのはさぞ大変なことだったに違いないと想像するのですが、まことに奇跡に近いようなお話ですよね。

 起工式のお供えや式次第にも目を見張りました。
一、 起工式開会の辞 一、修祓の儀 一、降神の儀 一、献饌の儀 一、祝詞奏上 一、清祓の儀 一、床鎮の儀 刈初の儀 鍬入れの儀 鎮物埋納の儀 鋤入の儀 一、奉玉串拝礼 一、撒饌 一、昇神の儀 一、起工式閉会の辞

 今まで、こんなに丁寧な儀式があるとは知りもせず、またお供えのしつらえも、きちっとあたりが鎮まる程の気配で供えられておりました。
 伝統建築というのは、こうしたところからも身の引き締まる思いがするもので、ほとほと感じ入った次第です。また一つ勉強になった、、と喜んでおりました。

 
 帰りがけ、直会も終り地元の奥樣方とお話をしておりましたら、素敵なことばを聞きました。
 「思いがけず儲けすぎた時など、独り占めをしてはいけないのよ。お福分けって言ってね、少しずつ皆さんにお分けするのですよ」と。
 
 以前、木場の材木屋さんからもそのようなお話を伺ったことを思い出しました。

 昔からの習慣には、いろんな知恵があるのだと改めて思いました。みんなでほどほどの幸せを共有していくという、今のIT業界の様に一人勝ちした者が勝者、とは全く違う世界。

 落ち着いた城下町彦根、昔住んでいた頃はどこも変わり様のない世界に思ったけれど30年過ぎて訪ねると、町の様子も一変しています。でもそこに住む方々の気持ちは、いい意味で、変わらないのでしょうね。
 現に地道にスミス記念堂の再建に向かって進んで来られた。多分関わってきた方々がいろんな知恵を持ち寄って、様々な場面を乗り越えてこられたのよね、そう思いました。

 スミス会議では、再建費用はまだまだ足りないけれど、来年度の「彦根城築城400年祭」に向けて動き出しました。引き続きたくさんの方々のご支援を、と呼びかけています。

 次なるイベント、上棟式は、7月中旬とのことでした。ではまた(あし)