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2007年02月02日

NO.361 記者ノート/ 「提言」について

 今朝、新聞を読んでいたら、私たちが発表した「提言」についての記事が掲載されていてびっくり。興奮してしまいました。

 というより、たった千文字で、この提言についてすっきりとまとめて書かれてあり、2度びっくり。さすがプロ。要点をまとめるとこうなるのね、と目から鱗の気分であります。あんまり感動したので書き写しました。

読売新聞/平成19年2月2日朝刊/文化面「記者ノート」より
「木造文化財保護 巨木あってこそ」

 日本人の心のふるさとと言われてきた神社仏閣や古い町並みなど、木造の文化財建造物が危機にある。乱伐と山林の荒廃で、修復に使えるような長く太く高品質の木材確保が困難になってきたからだ。そこで、200年先をにらんだ巨木の森づくりに取り組もうと、識者らでつくる民間団体が先月20日、国や自治体による「文化財の森」認定・登録制度の必要性を提言した。

 提言を発表したのは、「文化財を未来につなぐ森づくりのための有識者会議」。文化財保護関係者や学者、建築家、林業家らによって、5年前に発足、文化財修復の現況や課題を調査、研究してきた。

 わが国の国宝・重要文化財の木造建造物は約4000棟にのぼり、定期的な修復で保全が図られてきた。できる限り既存の部材を使用しているため、新たに必要な用材は年平均約520 立法メートルにとどまっている。

 ただ法隆寺金堂の扉のように、直径2メートルものヒノキが使われている例もある。「同樹種」「同品質」「同技術」という修復の原則に沿ったとき、果たして同様の一枚板が取れるヒノキは入手できるだろうか。しかも、最も適切な部材を探すには、多数の丸太が必要で、それだけの丸太が取れる立ち木は、広大な森があってようやく確保できるのだ。

 同会議では、「文化財に使われてきたような長径木の(大径長尺材の意)供給源だった国内の天然林が戦後の伐採で減少し、残る天然林も保護のため、調達する事が困難になった」という。やむなく台湾ヒノキなど外材に頼るケースもある。

 今後は民間の人工林に供給源を求めなければならない。そのためには、安心して数世代後をにらんだ森づくりに取り組めるよう融資や優遇税制で支援する必要がある。「文化財の森」の認可・登録制度のねらいはそこにある。もちろん、それだけでは文化財の保全は果たせまい。提言は文化財所有者自ら森づくりに関与すべきことや大工技術の継承にも言及している。

 同会議共同代表の一人で文化功労者の伊藤延男氏(日本建築史)は「日本の文化は木の文化だ。特にヒノキやスギという軟木が中心になったことが、日本人の柔らかな感性をもたらした」という。それだけに木造文化財の継承は「国民的課題」である。提言が文化庁や林野庁に送られて終わるものではない。多くの人が議論の輪に加わるべきだろう。
(千田龍彦)