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2007年07月18日

NO.391 「 風向計」より 「林業投資誘発へ 税改正を」

読売新聞S様より、速水亨さんの「風向計」が届きましたので掲載します。
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko070714.htm


林業投資誘発へ 税改正を

 世界の木材市場は、昨年、森林資源の供給が逼迫(ひっぱく)し、価格の上昇が見られた。
 大きな要因としては、中国の消費急増、中東諸国の購買力増加のほか、ロシアの強い民族主義的な資源政策が森林資源管理に向けられたことがある。一部の開発途上国で、森林開発が持続しないため、伐採量が減ったことも影響している。
 1人当たりの木材消費は、先進国の年間1立方メートルに対し、開発途上国は0.45立方メートルだ。国内では、住宅や家具、紙の原料としての用材消費が中心だが、世界では5割強がまだ燃料として使われている。開発途上国の多くは、まだ煮炊きの熱源であったり、日常生活で暖を取る燃料だったりしている。中国は、すでに燃料から建築や紙の需要に移っており、開発途上国も、今後は用材需要が中心になっていくだろう。
 逆に、先進国では、燃料としての需要が最近増えている。英国が良い例である。木質エネルギーを燃料とする発電所が新しく造られ、積極的に木材を購入しており、これが木材価格の上昇にも影響したらしい。

 こうした需給の変化のため、国内では輸入材を中心に価格が上昇し、相対的に安くなった国産スギ材の需要拡大につながっている。結果的にスギの価格も上昇したが、切られたスギの林に再び植えて、循環型の林業が成立するまでの木材価格には至っていない。
 英国は、日本と同じ木材輸入国である。英国の森林は、主に中部以北の丘陵地帯にあり、収穫の機械化が進んでいる。林業のやり方も、美しい田園風景から想像できないような、かなり荒っぽい管理をしている。
 以前に訪れたネス湖近くの森林は、植えたまま20年間一度も間伐されておらず、林の中は真っ暗だった。枯れ枝が下まで茂っていて、手で払い落としながらでないと、前に進めないような森林だった。このように日本と英国の森林管理は、かなり違うが、自国の森林資源を効率よく供給していくことで、地球環境を守っていく役目を負っていることに変わりはない。

 英日曜紙サンデー・テレグラフは先日、「英国の資産投資で、リターンが一番大きかったのは林業に対する投資」と報じていた。商業地への投資が18.1%、普通株への投資も16.8%と高いリターンだったが、林業への投資はそれらを上回る20.6%だったという。
 英国の林業税制では、木材販売で発生する所得や、2年以上所有した場合のキャピタルゲイン税、相続税などは税率0%だ。これが林業投資の大きな動機となり、裕福な個人投資家や年金基金をはじめとする機関投資家などが、伝統的に林業投資に参入している。
 日本も、中山間地域の振興策として様々な補助金や交付金が使われているが、林業投資を誘発するような税制改正を行えば、中山間地域の振興が図られる可能性がある。
 その時は、適切な森林管理計画と実行を前提にして税制の恩恵を与える必要がある。そうすれば雇用が発生し、中山間地域に工場を誘致したのと同じ効果が期待できる。森林管理も適切に行われることも多くなり、洪水の防止など公益的機能の発揮にもつながるだろう。

(2007年7月14日 読売新聞)   速水林業代表 速水 亨さん
1979年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。54歳。