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2007年08月24日

NO.401 便利堂とコロタイプ(2)―職人技の印刷工房―

 複製、と聞くとありがたみが薄らぐ、と思われるでしょうが、私は先日、便利堂のコロタイプ印刷の工房を見学させていただき考えを変えました。

 原画を撮影することで、原版を作るのですから、全く同じものが写し取られる。そこに色を重ねていく。模写というのは、原画を越えるものはあり得ないと思うのだけれど、でも最低限、写真は、同じものを写し取る。


 写真というのは、被写体の「気」をも写し取ることができるもの、と私は認識しています。心霊写真なんていうものは見たことはないけれど、でも「気」を封じ込めた写真は見たことがありますもの。何度こころ奪われたことでしょう。

 コロタイプは版画です、と、パンフレットにも明記してあるのですが、
そう、写真を用いた版画なのです。和紙や絹布にも写し取られたそれは、地色をもそっくりそのまま再現していく。地色の色見本を見ただけで感服しましたもの。

 「その色ごとの原版を制作し、40種以上のインクから職人が自分の目で思い描く色を調合し一色一色手作業で刷り重ねていく」のです。その作業たるや気が遠くなる程の、細かな職人技なくしては不可能な世界。

 とにかく手間の掛け方がすごい。三幅の釈迦三尊像の複製が先日完成したのですが、なんと撮影の日から数えて相国寺に納入されるまで、「かかった日数が367日」というからほんとに驚きます。

 一度見学しただけの印象ですが、工房の職人さんたちも一人一人がこだわりの固まりみたいな方(・・・に見えた)。
 頑固そうで、作業中の様子も恐ろしそう、こんな人のそばにいたら大変だろうな、なんて最初は作業よりもその職人さんの顔つきの方に興味をもって見てしまいましたが、でも、印刷機から離れて、質問を受け始めたとたん、その人はまるで別人。にこやかで。

 最初は後ろの方から大勢の見学者の肩越しに見ていたのですが、その方の説明でコロタイプの技法に引込まれ、いつのまにか前列に出ばって、いっぱい質問しておりましたよ。

 『大切にお取り扱いいただければ変らぬ美しさのまま数百年ご愛用いただけます』
 便利堂発行の大小さまざまな資料を参考にしながらこれを書いていますけれど、中のこの言葉に、<あし>はしびれたのです!
 今どき数百年先まで大丈夫、という商品があるなんて、と大感動したのでありました。
 この気概、素敵です。