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2007年12月14日

NO.420 歴史的町並みを国が支援

 新聞を見てなのですが、国が歴史的町並みづくりを支援するという記事がでていました。

 国土交通省と文化庁は12日、城下町や宿場町などの歴史ある町並みを維持・活用した町づくりを支援するため、「歴史的風致の維持再生に関する法律(仮称)」を来年の通常国会に提出する方針を固めた。
 市町村が、地域に残る城郭や宿場町の風情を残す町並み、神社、寺社、古墳などを中心にしたまちづくりを進めるための「歴史的環境保全整備計画(仮称)」を策定し国が認定する。認定を受けた市町村は一定区域内で、城郭の復元、景観維持のための障害物撤去や、その土地に伝わる祭事を復活させる事業などを行い、費用の半分を国が助成する。

 計画で定められた商家や町屋、石灯籠などの歴史的重要施設を所有する個人や法人が地方公共団体に譲渡する場合、1500万円を上限に所得控除し、所得税や法人税を軽減する。税制面の手当は、13日にまとめる与党の税制改正大綱に盛り込まれる。
(2007年12月13日読売新聞朝刊)
 というもの。

 先日12月6日に当会が主催した見学会のタイトルが
『まちづくり 点から線へ 線から面へ そして核には文化遺産を 〜文化遺産そして木造の良さを現代に生かすには〜』
 同じような趣旨での法律ができるようで喜ばしく思いました。

 景観にそぐわないあの家がなければ、看板を撤去できたら、などと忸怩たる思いで文化行政に取り組んで来られた方は多いと思います。

と同時に、少し危機感も感じています。
 というのは、城郭建築など大量の木材を使う場合に、(もちろん木造ですよねー)いい物を建てたいと願うあまり、木曽など天然林からの良材が、それも大径木がまた大量に使用されるのではと危惧するのです。
 今、華々しく素晴らしい木材を使って建てられても、その建物の200年300年先の補修材には、もう天然木は使えないのではないか、という危惧。
 残り少ない天然木は、新築物件に使うのではなく、今3000〜4000棟と言われる木造文化財の補修用材として使って欲しい、というのが当会事務局としての心境であります。

 それでは、外材で建てろというのか?コンクリートで作れと言うのか?と思われるかもしれませんが、勘違いしないで下さいね。
 天然林からの材ではなく、今ある人工林で育った木を使って建てて欲しい、と言っているのであります。
 人工林と言ったって、既に300年近い歴史をもつ林業地もあるのですから、立派な材がとれるはず。

 とにかく天然林の大径木は、わずかしか残されていないのです。その貴重な材は、現存する数百年も千年も経った木造文化財の、「同樹種」「同品等」「同技術」の原則にのっとった補修用材として使って欲しい、と心から思うのですよ。

 そして、もう一つ。
 観光の為にといった、経済効果を当てこんだだけの理由で「歴史的風致の維持再生」を考えないで欲しいと思うのです。
 その地に住む方々が、
「その地に必要なもの」、と
「その地の誇りとなるもの」、と
心から願う再生が大事なのであって、その為には住民の方々の合意形成が大変重要になると思われるのです。

 今回、近江八幡市での八幡堀の浄化に長年取り組まれた市民活動や、彦根のキャッスルロード「夢京橋」を成功させた、合意形成を得る為に長い期間を費やした取り組みを伺った後なので余計にそんな事を感じたのです。

 というのも近江八幡市のシンボル的な八幡山に、西武の堤氏の財力によってロープウェイが架けられ、村雲御所瑞龍寺が京都から移築されたのが、昭和36年の事。それから46年。
 今回、下見で初めて見学させていただいた瑞龍寺の痛み具合が私には、衝撃的でした。
 文化遺産って、その地に住む方々がかけがえのない物と大事に思い、住民みんなで守ってこそ、と最近思うのですよねー。

 素晴らしい法律が、現在文化財保存の為に真摯に取り組んでおられる方々のように、心ある人々によって誠実な使われ方をされますように、などと考えるのは、あまのじゃくかしらね。
 ではでは、また <あし>