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2007年12月22日

NO.421 天然林をつくって欲しい

 前回の事務局日記で、天然林の材を城郭などの新築物件に使わないで欲しい、と書きましたが、誤解されちゃうかなぁ、と思ってまた一言。
 (こうしてどんどん深みにはまって行くのかも・・・)

 天然林の材がどれだけ凄いかって、以前、発行した、会報4号で法隆寺の木材調査報告をしていますが、私も調査に立ち会わせていただいて、つくづく材そのものが文化財だと思いましたのでひとこと。

 たとえば金堂の扉板について。
 樹種はヒノキで、長さが2.96m。幅が102cm。厚さ10cmの芯去りの材。(木の中心をはずして採ってあるってこと)
 この材を取る為の丸太といったら、現存する材から推測すると、樹の高さが38m以上、人の胸の高さで測る直径が200cm以上はあったと思われるのですよ。年輪が、1mm幅としたって、それだけで1000年は越えている!

 私がため息をついたのは、金堂外側の裳腰柱。幅が21cmある柱の年輪が、1cmに24本も数えられるのです。という事は、24×21。それだけで500年!

 回廊の柱だって、一本の大きな材をタテに三本か四本に割って丸柱にしているのが何本か見られるのですよ。今度法隆寺に行かれたら是非探してみて下さい。その柱に触る事だってできちゃう。
 そんな凄い太い木が、法隆寺を建てた時(1300年以上も昔に)あの近辺の山に有った、と想像するだけでも楽しいですよね。

 だけど調査中に、もう、こんな木、どこにもない。同品等の材で修理なんて無理じゃないの?と思わずつぶやいたら、「それを言っちゃぁおしめぇよ」と寅さんみたいに、廻りの方々から言われてしまった。

 まぁ、奈良や平安時代の木造建築というのは、山に有った木を選り取り見取り使えた時代の証拠品のような木材なのですもの。それだけで文化財!
 そんな凄まじいほどの木が、現代まで伐られずに残されているのは本当にまれなのですが、でも現存する木造の建物が200年300年先に大規模修理が必要になった時、それに合う大径・長尺材がなかったらどうしようもないですもの。

 だから「今在る天然林の材を残して!」「たとえ伐っても300年先には立派な材が育つように再造林を義務づけて!」と声高に叫び続けるしかない。再造林、と言ってもめざすのは、現存する木曽檜のように天然実生で育った天然二次林もしくは綿密な計画のもとで育てられた人工林。

ここからが本論。
 世の中、各種リサイクル法ができて、様々な製品を廃棄する際の費用が消費者負担となりました。
 (実家でも、昨年6月、壊れていた古い大小二台の冷蔵庫を処分したのですが、そのリサイクル代金が9660円。もう絶句!)
 そんな事から考えると、大径材の利用に関しては、再造林費を木材価格に上乗せするという考えがあってもおかしくないですよねー。
 
 当会では、現在ある林分を「文化財の森」に登録されるようなしくみを提言し模索しています。

 その際、登録された文化財の林分から伐採された大径木に関しては、再造林費が上乗せされるようなしくみが必要ではないか、・・・これは<あし>の個人的考え
 でも、そんなことしたら、またアラスカやアフリカや外国から大径・長尺材を調達してくる業者が暗躍する、とご指摘を受けるでしょうね。ですが見識あるお寺や神社や地方自治体などは、きちんと再造林費も上乗せした材しか使わない。そんな流れを起こしたいもの。
 つまり持続可能な森林からの材しか使わない。外国の天然林から不法に伐採された材は使わない、という見識をお城や神社仏閣を建てる方には持っていただきたいのです。

「文化財の森」二人で手をつないでも抱えきれないような太く、高く、はるか頭上で枝を広げる大きな木が林立する森が、日本中あちこちにできたらいいな。古いお寺や神社の境内で感じる気配と森の中の気配が似ていると、たくさんの方々が気づいてくれたらすばらしい。

 木は素晴らしい。千年以上も昔に建てられた建物がこの世に現存することの素晴らしさ。木の命をいただきながら、また新しい命を吹きこんで、次の世代に伝えて行く。その匠のわざも素晴らしい。

 この日本という国土に生まれ育った「木とともにある文化」。
 それを次の世に伝える為に
 天然林の木をできるだけ残して欲しい、そして新たに天然林をつくって欲しい。というのが<あし>のお伝えしたかった事なのです。