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2008年02月27日

NO.430  風向計より 「国民総幸福量 問い直しては?」

 ぎっくり腰から無事復活。ご心配いただきありがとうございました。
 お陰さまで、元気です。

 速水さんのコラム「風向計」の新作が、読売新聞中部版(23日朝刊)に掲載されました。

 速水さんは、05年にアラスカに行かれ、森を見、ボブ・サム氏にも会われた。
 その後、何度かボブ・サム氏のお話しをして下さいましたが、その度に速水さんの別の一面を見るような気がしていました。今日のコラムを読んでちょっと納得。

 

 『国民総幸福量 問い直しては?』

 日本の一人当たりの国内総生産(GDP)が国際通貨基金(IMF)のレポートでは2007年に世界で22位になったそうだ。一時は1位でこの世の春を享受していた日本。だが、経済の自由化や規制改革で、潤うはずの日本経済もどうも上手くいかない。
 一昨年、ブータン王国のルンポ・ジグミ・ティンレイ内務・文化大臣の話をうかがう機会があったが、ブータンが大事にしているGNH(国民総幸福量)の話が興味深い。
 国民1人当たりの年収は1000ドルに満たないらしいが、これでも南アジアでは上位にあり、ブータンにホームレスはいないという。
 農業中心で、国内の3割近くが自然保護エリアで、森林も国土の7割を占めているという。そして木材が外貨収入源であるが、水力発電による電気も大事な産業であり、水源を守るために、森林保護を中心とした環境保全を国の大事な政策としている。
 この話を聞くと、日本の近代化は、国民の幸福量を増したかと首をひねりたくなるが、日本は実際、豊かで平等な国になったと思う。

 とはいえ、物質的な豊かさが決して心の豊かさを保証するものではないことも確かだ。
 バランスをとることが大事といわれるが、心の豊かさを計ることは困難である。
 私は、社団法人・日本林業経営者協会の会長をしている。この組織は森林をしっかりと経営していく為の社会的な環境を整備し、より適切な管理を森林に行っていくことを目標としている。 
 そのため、私は常に森林というものを経営の視点で見るように努力しているし、事実そのようにして管理して、それなりの森林を育てている。

 では本当にそれで幸せかと言うと、やはりちょっと違う。
 アラスカ南東部の島々に住むクリンギット族のストーリーテラーで、動物写真家、故星野道夫氏の友人ボブ・サム氏から、彼らに伝わる民族の話を聞く機会があった。その始まりの言葉は、「魂を語ること恐れるなかれ…」である。そして、延々と彼らが地から生まれて、精神を持つようになるところまでを語り、木々との、森との、心のつながりを語るのである。

 何度か彼の話を聞く機会があり、特に私がアラスカの森に入って、町に戻ってきた時に彼に出会い、そのストーリーを聞いたことは心に残っている。彼が来日した時、夜の熊野古道の近くで、踊りながら語る姿は、印象深かった。


http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko080223.htm
速水林業代表 速水 亨さん
1979年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。54歳。