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2008年07月14日

NO.439  風向計より「道路建設 コスト削減を」 

 凄まじい暑さですね。
 あっという間に夏本番で、体がついていかない今日この頃。
 
 相変わらず、朝の3時4時から一時間ごとに起こしにくる母の声は聞こえても、朦朧として目も開けられない状態で、やっと起きても頭はぼんやり。ことのほか暑さが厳しく感じられます。なんとかこの夏、乗り切らねば、、

 当会共同代表のお一人、速水亨さんのエッセイ、風向計より、が届きましたので、ご紹介させていただきます。
 風向計より 
 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko080710.htm


道路建設 コスト削減を
速水林業代表 速水 亨さん

 森林へ行く際に使っていて、長く乗り続けた大型四輪駆動車の調子が悪くなり、買い換えようと、車選びをしている。この車を買った時はあまり気にならなかったが、今はガソリンを入れるたびに、その大食らいぶりに財布の中身を心配すると共に、少々恥ずかしい思いがする。

 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)が世界の食料と石油の値上がりに関してコメントを出したが、そう簡単には解決しない。貧しさから脱皮できていないアフリカ諸国は、まず国民を飢えさせないという大問題を突きつけられている。
 先進国も、国際的に様々な資源の需給関係が、今までの安定的な状況から乱れ始めた。何物も安いところから輸入すればよい、お金を出しさえすれば手に入れることが出来る――。そんな時代から、長期的視野に立った資源の確保が必要な時代になってきた。

 もう風前の灯であった国内の炭鉱も海外炭が1トンあたり120ドル、国内炭は100ドルという価格になり、一部では積極的に国内炭を使おうという動きもあるらしい。とはいっても、国内炭の方が安くても、炭鉱がある北海道やその近くはともかく、関東などに運ぶと輸送コストで割高になってしまうらしい。輸送コストの高さは、国内の1次産業の力を奪っている。
 木材を運ぶ運賃も、海外から日本までの船賃よりも、私の町からトラックで関東に運ぶほうが高いほどである。
 木材など、一刻を争う荷物でなければ、輸送コストを抑えるために高速道路ではなく国道を使う。

 先日のガソリン税の暫定税率を巡る騒ぎを振り返ると、石油特別会計で守られている道路建設という聖域に多くの無駄があることが見えてくる。私は日本に、今後新しい道路が要らないとは思わない。
 私が住んでいる三重県紀北町にも高速道路がやっと出来ることとなった。東京と地元を行き来する生活だが、公共交通機関の便が悪く、車を利用することが多い。高速道路が延伸され、我が町に近づくにつれて便利になるのは間違いない。しかし人口減少が激しい地域を結ぶ高速道路は、開通しても交通量は多くはないだろう。

 だからこそ、道路の設計はもちろん、管理や周辺事業も、身を削る覚悟でコスト削減をしながら道路を造っていく必要がある。
 今の政治は、本質的な議論を避け、国民がさしあたって喜ぶ目先の効果を求めているように思える。
 道路が全て要らないのではない。産業界としては、輸送コストを抑えるための道路が必要なのである。このことは、仕事ではなく生活で道路を使う人々にとっても同様に大事である。

 そこで道路誘致を叫ぶ地方行政や地方経済界は、道路建設のコストダウンを同時に主張すべきではないか。そのような主張が誘致の運動に加われば、もっと産業に貢献すると共に生活に密着した道路が増えていくに違いない。

速水亨さん 79年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。55歳。

(2008年7月10日 読売新聞)