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2008年12月30日

NO.447  風向計よりー倫理観なくした米国企業

 速水さんの風向計が23日に掲載されました
 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko081223.htm

 速水さんとお話しているとよく、地域に貢献する事の大切さを語られる。
 当会理事の吉野の岡橋さんも、仰っていた。「吉野では、ヘリコプターで山奥の材を集荷する事が多かったが、それでは地域にお金が落ちないので、私は道を作る事にしたのです。」と、以前お会いしたとき路網の整備に力を入れていると話して下さった。
 
 地域の人たちの暮らしも支えていかないといけない。何代も続いてきた山の経営者の考えとは、そう言うものなのか、と感銘を受けた事を思い出しました。
 それにつけても、年末のこの寒空に、突然解雇、住み家まで奪われるとは、、、、とあきれる昨今の企業経営。
 速水さんの「日本企業の中にいまだに残る倫理を大事にした規範を中心に、人々に優しい経済システムを世界に広げてほしいものだ。」に、こころから同感。
 

倫理観なくした米国企業
速水林業代表 速水 亨さん

 新聞紙上は、世界不況を恐れる企業の大幅な人員削減や政府の景気対策、米自動車大手3社(ビッグスリー)の経営危機を米国政府がどのように処理するかなどの記事であふれている。
 ついこの間までの世界的な経済の好調は、米国の企業経営者に巨万の富を与え、結局それは多くの貧困層を生み出すことで成り立っていたことがわかった。経営者の報酬が年間数十億円と聞くと言葉を絶する。
 欧州も約10年前までは大企業の経営者の報酬は、高級とはいえ一般の常識で納得できる金額であったが、米国の企業経営に影響を受けて、急激に大企業の経営者の報酬は上昇した。日本では、一部の外資系の金融機関で似た傾向が見られるが、まだそれほどではない。

 日本では多くの会社が新入社員に「利を追わず徳を積め」と言うような社訓を教える。私のように長く同じところにとどまり、森林という動かない資産を使って、その木が育つ期間が数十年必要であると、短期的な利益の追求は墓穴を掘ることとなる。地域の人々から信頼され、「速水林業に任せておけば森林は良くなる」という評価をもらうことの方が重要となっている。まさしく「利を追わず徳を積め」だ。

 企業は利益追求することは当然であるが、社会を構成する一員としてその活動の広さを考えると、個人以上に果たすべき役割がある。利益追求の前提に社会に貢献することを大事にする意思が経営の中に盛り込まなければならない。また利益の先には適正な分配と言うことがなければならない。

 今回の米国での経済混乱は今までの経済活動の手法が社会の一員として、容認されることではなかった証しではないだろうか。本来、米国は1620年にメイフラワー号に乗ったピューリタン(清教徒)が開いた国であり、米国の生活はその豊かさ故に享楽的にとらえられがちであるが、本質的には米国国民の中にピューリタン的な質実で実直な生活がある。また企業経営者たちエリートには、「高貴な義務」を意味する「ノブレス・オブリージュ」の考え方があったはずである。
 しかし近年の米国はまゆをしかめる状況ばかりだ。やはり自己責任に頼る企業活動を野放しにした結果、拝金主義と言う人間の欲望が倫理観を葬り去ったのである。

 そう思って日本を見ると、現在の教育には礼節を尊ぶ精神を教えることはないが、潜在的な意識の中にはまだ存在する。宗教をどうこう言うつもりはないが、儒教的な精神、あるいは武士道の精神が残っているのであろう。「利を追わず徳を積め」という精神を共有できる人々は世界に多いのではないかと思う。今後、破綻した米国型経済システムに対して、日本企業の中にいまだに残る倫理を大事にした規範を中心に、人々に優しい経済システムを世界に広げてほしいものだ。

(2008年12月23日 読売新聞)
79年から三重県紀北町で家業の9代目に。06年から日本林業経営者協会会長。55歳。